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2004年12月07日

ビッグ・フィッシュ(Directed byティム・バートン)


ビッグ・フィッシュ...BIG FISH COLLECTOR'S EDITION


地に足をつけて生活している息子には、「big fish」である父が理解できない。家庭も仕事も順調だったこともあり、いつのまにか父と仲直りをすることすら忘れてしまっていた。そんな息子が父の死を前に、彼の物語を振り返る。父の最期の瞬間に息子がとった行動とは−−。

ティム・バートンの映画は絶対に劇場で観るべきだ。
…わかっていつつも、多忙にかまけて足を運べず、結局またDVDのお世話になってしまった。が、しかしそれでも、我が家のDVDの性能をもってしても、やはり映像は格別の美しさだ。ダニー・エルフマンの音楽もいい。印象的なシーンがいくつもあったが、鮮明な映像で思い出せる。そして、体の内側から切なくもあたたかい気持ちがふわっと蘇ってくる。

この映画は現在と過去(父の物語)とが行ったり来たりして成り立っているのだが、若い頃の父・エドをユアン・マクレガー、老いた父・エドをアルバート・フィニーが担当。好奇心いっぱいで光をまとっているように溌剌としたマクレガー、死の床にありながらも一筋縄ではいかない眼光をたたえたフィニー、二人とも「big fish」を好演している。

「big fish」は俗語で「大物」みたいな意味。ちいさな街で生まれたエドは、やんちゃな子ども。皆が恐れて近づかない魔女にも「右目を見せて」と言う。彼女の眼帯の下の右目には、覗いた人の死の瞬間が映るというのだ。エドはそこで自分の「誰にも想像できない奇想天外な死」を見る。

やがて成長し、街の人たちを怖がらせていた巨人を追い出すなどして、このちいさな街のbig fishとなったエドは、自分の度量に相応しい大きな地を求めて旅に出る。様々な困難や誘惑にも流されることなく、ただひたすら自分の力で泳ぎすすんで、ついに棲み処を見つける。それはサンディというブロンド碧眼の少女だ。奇妙なサーカス会場で彼女をみそめたエドは、今度は彼女を求めて力強く泳いでいく。授業のスライド、飛行機雲、庭いっぱいに敷き詰めた黄色い水仙、あらゆる手段を使って、力いっぱいに想いを伝えるエド。その一途さに打たれたサンディは結婚を承諾する。しかし、無情にもエドに召集令状が来る。サンディに会いたい一心で任期を短くするため、エドは任地で数々の危険を冒す。腰のところで繋がった双子姉妹の助けを借り脱出したエドは、長い旅の末、とうとうサンディの許へ帰る−−。

たぶん観た人のほとんどが印象に残ったシーンとして「サーカス」を挙げると思う。そこでのサーカスは、サーカスなんて呼べないようなささやかなもの。猫がエイヤッと座布団の上に飛び降りるののどこに芸が?なんてのもあって、穏やかな微苦笑を誘う。あのサーカスのシーンはエドの人生そのものかもしれない。起きていることは、全然たいしたことではないけれど、その見せ方によって周りの人を楽しませる。そして誰もがエドを好きになるのだ。
そんな人生舞台に突然咲いた水仙の花が、サンディだったというわけだろう。実際はもっとストレートに結ばれたのかもしれないが、「幾多の困難を乗り越えて得るのと同じぐらいの愛」ならば、事実なんて無意味。それならば愛の大きさの分だけ脚色してしまおう、というのがエドの生き方だ。

だが、あくまでも「真実」を見たい息子のウィルは納得できない。ウィルはエドの浮気相手と思われる女性に会いに行く。彼女もまた、エドのようにウィルに素敵な物語をきかせたあと、
「彼にとって女は二種類。それはあなたのお母様と、それ以外の女。私はそういう人を愛したの」と言う。
浮気の事実はどうだかわからない。ただ、父が母を想う気持ちは確かなのだろう。劇中のウィルは知らないことだが、何年経っても、たとえ浮気相手がいても、それでもお互いに強く愛し合っているということを、私たちはバスタブのシーンで見ることができる。

「乾いてしまったよ」「私は涙が乾きそうにないわ」
たった一言ずつ発せられた言葉で、彼らの来し方行く末がすべて出ている。
大きな夢の魚として生き生きと輝いていた夫は、もう一度、泳ぎたいと思う。だが、もう叶わない。妻はかつて光に包まれた日々を共に過ごした夫を失う日が近いことを知っている。その二人が水に満ちた狭いバスタブで、これまでの愛を確認するかのように最後の抱擁する。この映画の中でもっともファンタスティックで美しいのは、この老いた二人の愛を表現した「真実の」シーンだ。

エドはウィルに自分の死を託す。ウィルはすべての人に愛されたエドに最高の旅の終わりと、新たなる冒険への旅立ちをプレゼントする。エドの世界を完成させたのは、他ならぬ息子のウィルだった。ウィルが嫌ってやまなかった「嘘」が、結局親子を再び結びつけたのだ。そしてそれはウィルの息子にも受け継がれて……


いい映画を観たなぁーという充実感でいっぱいになれる作品です。お葬式のシーンも一切の台詞が排されていて、登場人物たちの表情ですべてを語るのですが、ほんとうにエドはみんなに愛されていたのだなと素直に羨ましくなります。実際に泣きはしませんでしたが、心の中は滂沱の涙でございました。
最愛の人と結ばれる幸せな人生を送り、幸せな死を迎え、そして死後もみなに慕われる−−いつか振り返ったとき、自分自身がそんな人生を送れていれば最高だなと思いました。
そんな筆者は、ひとつめの段階で躓いております。イテテ
posted by まりあ at 20:31| Comment(1) | TrackBack(1) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Do you know?のシゲです。
コメントありがとうございました。
安倍さんはライターだけあってすごい文章が上手いですね!
これだけ上手く文章が書けるなんてスゴイうらやましいです(羨望の眼差し)
ブログはまだ初めたばかりのようですが、二時間睡眠に負けないで更新してください。
じゃ、またでーす。

追伸、ハゲは隔世遺伝なんですね!?じゃあ、あんなことやこんなことしなくても大丈夫ですね!!
嗚呼、髪様ありがとう(救)

※「たぶん」なんて文字は目に入りませんでした。
Posted by シゲ at 2004年12月27日 15:38
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Tracked: 2004-12-27 14:19
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